壱、開花病
僻地に診療所を構える秒
竹林の中の清涼感が好きだった。竹の間から差し込む陽の光が好きだった。だから、この場所に診療所を構えたと云ってもいい。
ある夏の日。秒は竹に呼ばれた気がした。
そうして、竹林の奥へ奥へと迷い込む。
弐、霙陰病
遺伝的畸型病の一、霙陰病である緋乃夏
けれども、彼女は"ふつう"になりたかった。
だから、噂に聞く医師のいる場所へと赴いた。
その、血液の通った赤く美しい髪を携えて。
参、碧血
有名な薬師の家系、八双寺
体の弱い草介は、本家で療養していた時に、麝香揚羽である"彼女"と出会っていた。
そして、彼女のことを知る、親戚の御影姐さん。
御影姐さんは今、薬草となって本家の庭に植っている。
「御影の薬草を、持っていくかい?」
当主がそう、囁いた。
肆、眼目花鈿病
目の見えぬ物書きが一人。喋れぬ女が一人。
桜の大木の下にある小さな家に棲んでいた。
彼の物書きにはフアンがいる。小さな小さな二尾の狐である。彼の"師匠"とやらの家が医師の家らしい。物書きは二尾の狐に聞いた医師を尋ねる。
世界が見えるようになった時、そこには。
伍、本ノ蟲
「本に擬態する蟲がいるんだって」
漢字蒐集家 原市 恭一郎の元に友人である昆虫蒐集家 八双寺 莪堂(がどう)がやってきて、そう言った。
蔵書が沢山ある恭一郎の書庫であれば、その本に擬態する蟲が見つかるかもしれない。
恭一郎は、自分が人間を嫌うあまり、人間に擬態した何かだと思う。
本に擬態する蟲は、何故、本に擬態するのだろう。それは、自分と同じ気持ちなのだろうか。
陸、綺食家
とある村の唯一の薬師森下
自らが美しいと思うものを喰らう病「綺食」。彼はこの病とどう向き合ってゆくのだろうか。
漆、妖刀 奇雨
愛しい者を殺してしまうと呼ばれる妖刀 奇雨。
その妖刀を手にし、愛しき人を視界に入れた彼の人物は、何を求めたのだろうか。
愛する人を、自らの手で屠った、彼の人物は----。
本編:蝶塚
スピンオフ:蝶塚 - 昆虫標本時慕情 -
★蝶塚 - 短編集 -