第2回:終わる日の話

    七詞:
    今日はさちがきてくれてるよー!
    さち:
    今日は。ぬいぐるみさん。
    今は七詞くんかな?
    七詞:
    ななしだよー、さち!
    世界線としては、ちゃんと死ねたさちだね!
    さち:
    うん。そうだね。
    七詞:
    でも、さちが死にたいって思っているのは知っていたけど、本当に死んじゃうほど死にたいって思っているとは思わなかったなー。
    さち:
    そうね。死ぬってちょっと大変かな。
    七詞:
    睦眼さんもそう言っていたよね。
    そこがさらに好きだとも。
    さち:
    ふふ、睦眼さんは本当に私のことを解ってくれてるなぁ。
    七詞:
    さち、ぼくはヤキモチ焼いちゃうよ!
    ぼくのことだっていつも一緒に居てくれたよね!?
    さち:
    ごめんね、七詞くんが生きているなんて知らなくて…。
    七詞:
    ぼくを無機質のぬいぐるみだと思っていたってこと?
    さち:
    無機質…そう、なのかな?
    七詞:
    今や生きてない無機質のぬいぐるみの方が少ないよ、さち。
    さち:
    でも、七詞くんも動かないよね?生きているのに。
    七詞:
    ぬいぐるみにはいろいろと制約があるんだよ。
    あくまでも擬態しているだけだから、擬態を変えることができるけど飼い主に見つかっちゃダメだとか、飼い主とお喋りしちゃダメだとか。
    さち:
    今、お話ししているのは大丈夫なの?
    七詞:
    だって、さち死んでるから。
    さち:
    それならいいのね。
    七詞:
    うん。って云うか、コラム半分くらいすぎちゃった…。
    ええと、本題に入らなきゃ。さちはどうして、死んだの?睦眼さんが云っていたことはあっているの?
    さち:
    うん。睦眼さんが云ったことは正しいよ。本来なら私は独り立ちができる。でもできない。そんな自分に虚しさを覚えてね。
    七詞:
    虚無だね!
    さち:
    そうね。
    七詞:
    「いじめ」ってやつも受けてたの?
    さち:
    うん、そうね。でも、まぁ、それはどうでもいいかな。
    私とあの人たちは違う世界にいる人たちだから、別にどうだっていい。
    精神的ないじめだったからまだ良かったよね。そのまま殺されちゃう人もいるみたいだから
    七詞:
    殺されちゃうなら、それはそれでさちにとっていいんじゃないの?
    さち:
    死ぬ時くらい、自分のタイミングがいいなぁ
    七詞:
    そういうものなんだー。
    さち:
    そうね。
    「せめて」死にたい時に死にたいと思うわ。
    七詞:
    寿命のないぬいぐるみにはよくわからないなぁ。
    さち:
    ぬいぐるみは、寿命がなくても死ぬことはあるんでしょう?
    七詞:
    さすがに、切り裂かれたりしたら死んじゃうね。
    でも、寿命がないから死に対する恐怖?って云うか欲求?は凄く少ないな。
    死にたいとか生きたいとか、そういう感情がない。そもそも、何もしなくても生きるから。
    うーん、そもそも生きることに執着しないっていうか。
    さち:
    いいな。私もぬいぐるみとして生まれたかったな。
    七詞:
    そしたらもっともっと、ぼくもさちと一緒に居られたのにー。
    さち:
    ありがとう、七詞くん。私も、もっと七詞くんを大切にしてあげれば良かったね…。もう、遅いけど。
    七詞:
    大丈夫だよ! もしこれを読んだ人がナニカに擬態したぬいぐるみを大切にしようって思ってくれればぼくはそれで本望だな!
    さち:
    優しいね。
    七詞:
    そんなことないよー。
    あ、もっとお話ししたかったけどそろそろ終わっちゃうー!
    さち:
    七詞くん、ありがとう。バイバイ。
    七詞:
    こちらこそ、ありがとうなんだよ!バイバイ!