第4回:歪む歪み

    語り部:
    第0回でも語ったが、現実で、すべての始まりの物語歪む歪み。
    やっと、嘘と匣を呼ぼう。
    嘘:
    こんにちは。
    匣:
    やっと出番かー!
    語り部:
    こんにちは。
    さて、二人は「絶対幸福論」を唱えて世界に存在しているんだよね。
    嘘:
    この物語は、終わったあとの物語。
    セピアが幸せではなくなった物語。
    幸せを取り戻すーーつまり俺と理が出会って、もう一度尻尾が繋がれば幸福は戻ってくるーーと信じている。
    匣:
    幸せを失くした世界で、幸せを感じていたら、その幸せが去った時にはもう二度と手に入らない。だったらーー。
    幸せだと思っているうちに死ねば不幸にはならない。「一生幸せに暮らしました」。
    語り部:
    面白いね。
    嘘:
    この物語は幸福を求める物語。
    「止まない雨はない」と云う言葉があるが、幸せだっていつかはなくなる。
    だから、手に入れたらそこで「死」を以って止める。
    それが幸せを失ったセピアの物語の中で俺たちが「幸せ」を求めた結果だった。
    語り部:
    なるほどね。
    匣:
    セピアは、お花さんと別れてしまった。別れなければならなかった。
    それを体験した時、彼女が考えたのは「幸せがなくなるくらいなら幸せを感じた時に死んだ方がいい」と云う事。
    だからセピアはセピアの中の愛しい登場人物たちには「幸せを感じたら死んだ方がいい」と考えた。
    それが俺たちなんだ。
    語り部:
    歪の最初の思想がそうだったんだね。
    嘘:
    そうみたいだな。
    だから、その後の歪シリーズは「幸せ」をテーマに一人の人間の内面を描くストーリーになっている。
    霧:
    あれ?お客さん?
    匣:
    おう、霧。
    語り部:
    こんにちは。
    霧:
    誰…?
    匣:
    なんて云えばいいのか。
    語り部:
    キミは、セピアのところの子猫だよね。
    霧:
    うん!お兄さんはセピアを知っているの?
    語り部:
    うん。知っているよ。
    霧:
    どこにいるのかな?ぼく、セピアとはぐれちゃって、それでここにいるの。
    語り部:
    早くセピアの元に戻りたいかい?
    霧:
    もちろん!飼い主と一緒にいたくない猫なんていないよ!
    あ、でも嘘と匣はずっと野良なんだよね。
    嘘:
    野良、と云えば野良かな。
    霧は俺たちと一緒にいるのはイヤか?
    霧:
    イヤじゃないよ。でも、セピアにもう一回会いたいな…。
    語り部:
    セピアは愛されているな。
    匣:
    ここはセピアの世界だからな。皆セピアを愛しているし、自分を愛さない人間なんていないだろう。
    語り部:
    自己を肯定する概念なんだね。
    嘘:
    そうだな。
    そもそも、親はお花さんを愛したセピアを「否定」した。
    セピアは一番身近な他人に「否定」されて生きる必要があった。
    「否定」されて生きる事は辛い。だから自ら自分を「肯定」するしかなかった。
    それが俺たちだ。
    霧:
    よくわかんないー!
    匣:
    大丈夫だよ、お前は何も考えずにセピアを好きでいればいいんだ。
    霧:
    セピアの事はずっとずっと大好きだよ!
    匣:
    それでいいんだよ。
    語り部:
    さて、そろそろ終焉の時間だ。
    嘘:
    では、また次回。
    霧:
    ばいばーい!
    匣:
    じゃあな!