人の夢とは気に儚きものである。するりと記憶から消え逝くそれは、夢か現実か。夢に登場するは己か他人か。極彩色かモノクロか。過去か未来か現在か。その中には、一体何があるのだろうか。幾千の夢は何処に繋がりやるか。何処にも繋がりなど無いか。夢の中に入る前、そして幾千もの夢とそれを経た物語。
夢
夢には過去も未来もなく、現実も空想もなく
そこにはただただ、純粋な想いだけが存在する——
第一夜 座敷童
私は出張のため遠くにやってきた。
そこで取った宿は至極居心地がよく、そして何かと運が良い。
まるで、座敷童に憑かれたように。
第二夜 雨女
ああ、あたしはね。雨の中チャリをぶっ飛ばしてるよ。
危ない? そうかもね。
あんたに語ってる「今」はいつか、だって? はは、愚問でしょ?
第三夜 視鬼
ここは、何処だ。貴女は、何処だ。
私は眼を失っているから、何も視えぬ。
暗闇を、彷徨う。
第四夜 繭
私は蚕。生まれて、ご飯を食べて、繭になる。
ずっとずぅっと、一人法師さ。
第〇夜 絶対幸福論
この世界に生きている人はね、幸福で「なければならない」の。常識よ。
あら。貴方って可笑しな人ね。この世界には神様なんて居ないのよ。
え? 神様は居る、ですって? そして、神様は神様を忘れた人を怒ってるの?
だから、神様はこの世界を滅ぼす……? そんなことをしたら、幸福じゃなくなるわ!
ええ。人々は幸福であるべきなの。神様を殺してでも。